体を壊してまで働く正社員を見て

大学を卒業後、メーカーに就職して5年間営業事務の仕事をしていたのですが、結婚を機会にその仕事を退職をしました。退職してから新たに正社員での転職活動もしてみたのですが、なかなか次の仕事が見つからなかったので、登録型の派遣社員として働いてみようと決意しました。

その後は大手商社の関係会社である人材サービスに派遣登録をし、派遣社員として大手企業で働いておりました。

業務内容は、チームに所属する各営業マンたちのサポートをしておりました。営業マンからの指示で発注をかけたり、資料作りのお手伝いをしたり、在庫確認や納期の管理をしたりするのが主な仕事です。また部署の総務的な仕事もあり、ファイル棚の整理や事務用品の注文・在庫整理、会議室の予約や管理を任されており、お客様へのお茶出しやご案内もしておりました。

手の空いている時には、課長さんのコピーをとったり資料を作成したり、デスク周りの整理やスケジュール管理といった秘書的な仕事もこなしておりました。職種は大手商社における営業事務兼総務秘書といった内容の仕事でした。派遣社員で助かったと思えるのは、仕事量の少なさです。元々ゆったりとした部署でしたので、派遣社員にはある一定の決まった仕事だけをしてもらうというチームの方針に従って、私の日常的な業務量はそれほど多いものではありませんでした。毎日ほとんど定時に帰れていましたし、これといった複雑な業務も私にはまわってきませんでした。

一方で、同じチームに所属していた正社員の女性事務員の仕事の量は、私の数倍はありました。サポートする担当する営業マンの数も多く、月平均の残業時間も男性並みの多さでした。業務内容も一般的な営業事務員の枠を超えていて、エクセルで複雑な関数を組まなければいけない仕事だったり、簿記の高度なスキルを要求される事務処理も多く、わからないことが発生するたびにその正社員の女性はわざわざ研修センターへ研修を受けに行ったり、経理部に直接指導や打ち合わせに足を運んでおりました。たまに外国からのお客様もいらっしゃったのですが、その際にはどんなに業務が忙しくても、夜の接待や東京案内などに外へ連れ出されていたようです。その社員さんは英語が全くできなかったにもかかわらず、会社命令で無理にでも外人客の相手をさせられて、いつも強いストレスがかかったせいで、とうとう胃潰瘍になって通院する羽目になってしまったのです。

さらにある時会社の引っ越しがあったのですが、キャビネットの段ボール詰めから営業マンの机の整理まで休日出勤して一人でやらされていたらしく、肘や腰を痛めてしまったとも言っておりました。人間の体は一つしかないのに、度を超えた莫大な量の仕事量や健康被害を見るにつけても、自分はつくづく派遣で助かったと思いました。

給料の面をみても、私は派遣でしたので、残業するときちんと10分単位で1.25倍の残業代がいただけていたのですが、一方で正社員はどんなに残業をしてもあまり残業をつけるな、という暗黙の掟のようなものがあったそうで、その正社員事務員さんの手取りは実際の働きとは比較にならないくらい少ないものだったそうです。やがてそのチームでの派遣期間も終了し、私はそのチームを離れて別の部署へと移動になったのですが、どこの部署へ行ってもやはり正社員は馬車馬のように働いていました。

後から聞いたのですが、その正社員の女性は患っていた胃潰瘍が悪化して、とうとう入院を余儀なくされてしまったとのことでした。そんな風に体を壊してまで仕事をするなど、派遣の私にはとうてい考えられません。その話を思い出すたびに、つくづく自分は派遣社員で本当に良かったと思います。